研究室紹介

研究の概要

 ロボットや知識処理システムは目覚ましい進歩を遂げていますが、未だ人間の顔を見分けたり、人間と対話を進めたり、ユーモアを理解したりといった高度な知的活動を行うには至っていません。これらを実現するためには、人間はどのような刺激に対してどのように反応するのか、どのように物を認識しているのか、どのように言葉を理解しているのかなどについて考えることが必要です。当研究室では、上記のような知的活動を実現するために、人間の感覚・知覚に関する研究や人間の生活を支援する知識処理技術についての研究を進めています。


人間情報工学とその応用に関する研究

1. バーチャルリアリティの感覚情報学(基礎的学術研究)

 大画面の3D映画を見たり、バーチャルリアリティを体験すると、仮想環境内で自分が動きまわっているような感覚(視覚誘導性自己運動感覚=ベクション)を覚えます。よりリアルなベクションを与えることにバーチャルリアリティの価値がありますが、一方でサイバー酔(VR酔)と呼ばれる一種の乗物酔が生じます。視覚を通して知覚されるベクションと前庭感覚を通して知覚される運動感覚との間に情報の競合が起こることがこの原因であると考えられてきましたが、ベクションの強さと不快感強度は必ずしも対応せず両者の因果関係が疑問視されています。

 本研究では、コンピュータグラフィクスよる3Dアニメーションを製作し、視運動刺激を等しく保ちつつ、経験・学習によって得られた認知・認識を利用して知覚されるベクションを変化させます。ベクションを回転/並進やその方向(重力加速度に対する相対的方向)によって区分し、ベクションの種類毎に不快感強度との定量的関係を求めることによって、ベクションとサイバー酔との因果関係を明らかにします。この研究は、映画製作への応用だけでなく、宇宙酔メカニズムの解明をも目指したものです。

Virtual Reality System

2.3Dドライビング・シミュレータの開発研究

 3D映像音響システムやステアリング・コントローラ等を用いて、3Dドライビング・シミュレータの開発研究を実施します。加減速感や奥行き感覚を高めるような仮想空間の呈示法を開発し、ドライビング・シミュレータで多く見られるオーバーターンを抑制します。また、視野映像の動きによってカーブ時に頭部運動を誘導し、傾斜感覚を生じさせずに遠心加速度を知覚させて実車運転時の感覚に近づけます。同様に頭部のピッチ傾斜を誘導して慣性加速度を知覚させ、停止時に感じる違和感の軽減を図ります。視覚刺激(運転者の視野映像)の改良を中心に、シミュレータ酔を抑制するドライビング・シミュレータの開発を目指します。一方、実車運転時やシミュレータ運転時の頭部および上体の運動を計測し、シミュレータ運転時の感覚矛盾を推定します。

 なお、本研究はアミューズメントのライド・アトラクションへの応用も視野に入れています。

Driving Simulator

3. 乗物酔いを軽減する映画上映法の研究

 昨年度まで5年間にわたって車酔いを軽減する機能を付加した車載TVの開発研究を行ってきました。走行中に車載TVで映画を観ると通常乗車時に比べて2倍程度強い車酔い(絵本を視る場合の約8割の強度)を発症しますが、車の右左折や加減速に対処した映像表示法を用いることで70%以上に及ぶ車酔い低減効果が得られました。

 今年度からはこの研究を発展させ、大型船舶の洋上ムービー・シアターへの適用を目的として、乗物酔いを軽減する映画上映法の開発研究を実施します。また、乗物酔い強度の定量的計測を目的として、循環系・呼吸系を中心に生体信号計測を行います。

Ship

4. 生体信号計測による動揺病発症検出法の開発

 動揺病の発症は快適性の低下のみに留まらず、精神活動の低下や肉体的変調による感覚・知覚能力の低下を来たして事故を誘発する危険性すらあります。そのため、動揺病の発症を逸早く予測・検出し、快適性や感覚・知覚能力の低下を未然に防ぐ手段・デバイスの開発が重要です。本研究では、生体信号計測により身体の内部状態の変化を測定することによって、本人が不快を感じる以前に動揺病の発症を逸早く検出する方法の開発を行います。本年度は、種々の仮想環境内で3Dドライビング・シミュレータを被験者に運転させ、覚醒水準・緊張度・興奮度・不快感等が異なった強度で誘起されるように刺激を与えます。心臓自律神経活動、呼気CO2分圧、脳温、皮膚電図、唾液成分などの生体信号を計測する一方、動揺病不快感(discomfort)の強度、楽しさ(enjoyment)および寛ぎ感(relaxation)を測定します。生体信号の反応の因子分析を行い、求められた共通因子を説明変数として心理学的測定値を重回帰分析し、動揺病に対応した成分を生体信号の反応から抽出して動揺病の発症を予測・検出する方法を検討します。実車等で適用できる実用的な検出法を得るために、簡便な生体信号計測法を検討します。

 本研究は将来の製品化を視野に入れたものであり、不快を感じる以前に動揺病発症を検出して快適性の低下を未然に防ぐデバイスや手法の開発研究に発展させます。


Computer Aided Language Learning (CALL)システムの研究

1.英文の自動添削システムの研究

 インターネットや国際交流の普及により、英語が重要視されています。しかしながら、日本人は英語が得意な民族とはいえず、英語教育や英作文における支援は欠かせません。本研究では、主として日本人の書く英文(一般的な英文や専門英語)の誤りを計算機が発見し、可能であれば、正しく修正するシステムの実現方法、具体的には、電子化された英字新聞(1億語収録)等から、自動的に誤り検出、訂正のルールを獲得する手法等を研究しています。開発中のシステムを、Web等で公開しています。開発用のプログラミング言語は、Perlを用いています(Perlは、Web上でHTMLを動的に作成する際に、最も良く使用される言語)。

細かなテーマ分類としては、

  • 人工知能Ⅱの授業で紹介したシソーラス(意味属性)辞書の利用による精度向上
  • 2回目に出現する名詞句は、theが付きやすいという英文法を利用した精度向上
  • 使いやすい英文添削システムを目指したユーザーインターフェースの設計構築
  • 科学技術文書に頻出する、数式、化学式、固有技術用語等の正しい解析による精度向上

等があります。

2.効率的な英語習得の研究

 英語の全般的な能力向上には多大な時間と努力が必要なため、向上感や達成感を感じることは困難です。しかし、自分の仕事の必要性や興味に応じて、学習する英語分野の文書を限定すれば、そこに出現する単語(や文法)は限定されてくるので、専門分野に特化した英語能力は割と速く向上します。こうした事実を、客観的なデータを構築していくことにより具体的に数値で示すことを目標とします。また、専門英語の授業の改良に向けた、専門英語に関する語彙調査等や計算機用で用いる辞書の自動構築(イディオム辞書)などのテーマも考えています。

 いずれのテーマも、過去の研究室の先輩の業績を改良、改善していく形からスタートするので、研究開始時にとまどうことは少ないでしょう。卒論の遂行には、名詞に関する高卒時の知識が必要なので、その復習(学習?)から始めればよいと思います。

 既に英語の能力や興味があったり、逆に、英語の力が平均よりも劣っているので努力して能力を伸ばしたい人には適していると思われます。なお、研究室見学時には、わかりやすさのために、日本語の添削システムのデモを行う場合もありますが、配属後のテーマは、英語の添削システム関連のみです。

 仕事で使える英語の訓練の観点から、当研究室では、院生の半分以上が、海外インターンシップ又は(三重大学内での英語での研究発表に加え)大学外での国際会議での発表を行っている実績があります。なるべく、大学院1年時に行うことで就職活動前に実績が得られ、かなり有利になります。

Last modified:2014/12/02 09:29